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桃の缶づめ

桃の缶づめ

~第2章~

~~~~呪いの椿油 第2章~~~~




オババは、傍らにあった椿の長羽織を、すばやく羽織ると、シワだらけの手に、椿油の瓶をつかみ、赤茶けた蓬髪にドクドクと振りかけたのだ。

一瞬、オババが、苦悶の表情を浮かべたと思うと、蓬髪はみるみる
美しい黒髪へと変わり、オババの顔は、しわが伸び、肌は張り、
あぁ、なんという不思議、なんという恐怖、次第に千恵子の顔へと変わって行くではないか!

口をきくこともならず、おののいていた桃和香は、ようやく
「こ、こんな恐ろしいことが・・千恵子、あなたは千恵子なの?」
と、しぼりだすように、尋ねた。

椿の長羽織を、はおり、すっかり千恵子の姿となったオババは、いな、千恵子は答えた。
「桃ねえさま、私は千恵子よ。椿油の呪いのせいで、こんな姿になってしまったけれど、私は、まごうことなき、ねえさまの妹、千恵子ですっ。」
そう言うと、ハラハラと涙をこぼした・・

桃和香は、捜し求めていた、千恵子の姿を、今まさに、目の前にして、千恵子にいざりより、しっかりと抱きしめながら、自らの涙を抑えることは、できなかった。

「千恵子、な、なぜ貴女は、あのような恐ろしいオババの姿になったのです?そして、今のことはいったい??」


千恵子は答えた
「桃ねえさま、わたくしは人を殺めたのです・・わたくしの欲望のために・・その結果がこれなのです。」
「ええぇっ?あなたが、ひとを?」



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